不器用ハートにドクターのメス
瞬時の出来事で、お疲れさまです、すら返せなかった。
真由美は、言葉を口に出す前に、いったん、それが本当に正しいか、相手を傷つけるものでないか考えるというプロセスを踏むため、話し出すのに時間がかかってしまう。
その口ベタっぷりが、真由美の無愛想な印象に拍車をかけており、本人もそれは理解しているのだが、頑張ったところで元来の性格はそうそう直るものではない。
……挨拶もろくにできないなんて。
どうしてわたしは、いつも相手に嫌な思いをさせてしまうんだろう。
オペの出来にくわえて、自分の性格にも改めて意気消沈する結果となってしまった真由美は、背骨を丸めて歩き出す。
本人は消えてしまいたいほど申し訳なく思い、落ち込んでいるのだが……背を丸め眉間にぐっとシワを寄せるその姿は、かなしいかな、不穏感に満ちた、やさぐれた女に見えてしまうのであった。