不器用ハートにドクターのメス
やりやすかった。その言葉を聞いたとたん、とうとう涙がこぼれそうになって、真由美はぱっと目を伏せた。
一生懸命、予習をした。夜更かしをして勉強した。
そうだ。わたしはこの人に、認められたかったんだ。ほめられたかった。
先生の、役に立ちたかった。
「〜真由美!?」
その時、突然車外から呼び声がかかり、真由美の目頭にたまっていた涙はひゅっと奥に引っ込んだ。
目をしばたかせて、窓の外を見る。そこには、よく知った顔が二つ並んでいた。
急いた様子で声をかけてきたのは、真由美の両親だった。
帰ってこない娘と、家の前に不自然に停車した車が気になったのだろう。いぶかしく思いながら、外に出てきていたのだ。
真由美はあわててシートベルトを外し、神崎を見たり両親を見たりとせわしなく首を動かしながら、ドアを開け、車外に出る。
神崎もエンジンをいったん落とすと、真由美に続いて、運転席から外に出た。
真由美の両親は、突然現れた長身の男前に、目も口も丸く開けて、ぽかんと硬直する。
一方で神崎も、父親側があまりにも……本当に見事に真由美とそっくりの見目をしていたため、目を見開いて肝を抜かれていた。
「あ、あのねっ、こちら、神崎先生」
固まっている両親を見て、とりあえず紹介させていただかなければと、真由美はしどろもどろになりつつ、神崎を手で指し示す。
「大学病院のドクターなの。えと、今日、わたしが体調崩しちゃって、それでとてもご丁寧に、ここまで送ってくださって……」
「初めまして。大学病院で一緒に働かせていただいております、神崎と申します」