不器用ハートにドクターのメス
……お父さんが、神崎先生に何か話しかけている。
家に入る前に一度後ろを振り返った真由美は、自分の父親と神崎が向き合って言葉を交わしている様子を見つけた。
しかし、二人が何を話しているのかは、距離的に全くわからない。
一体何の話だろう。父親が戻ってきたら尋ねてみようと思っていたものの、結局真由美は、その件について聞くことはできなかった。
家に入ったとたん、まるで電源が切れたように、脱力してしまったからだ。
今日はさすがに、朝から無理を強いすぎたらしい。気が抜けてしまうと、もはや立っているのも難しかった。
「お風呂は明日の朝にしたら?」
そんな母親の言葉に頷き、なんとか濡れタオルで体を清拭し、歯だけ磨いて、真由美はベッドに潜り込んだ。
やっと訪れた安寧。ゆっくり横になれることがどれほど幸せかを、身をもって感じる。
とろんと重い瞼を下ろして、真由美は思う。
……今日は本当に、色々ありすぎた一日だったな。
一週間を圧縮したみたいな、とても濃い、一日だった。
思考は、そこでプツリと途切れた。
羊など一匹も数えることなく、真由美は即座に、眠りの世界に落ちたのだった。