不器用ハートにドクターのメス

先生のように、助けてくれる方がいると知って、安心したということ。

これからも娘をよろしくお願いしますという締め。

重ねられた言葉の節々に、娘を案じる親心というものがにじんでいた。

それらを全て静かに聞き、短い回答をそれぞれにし終えた後、神崎は気づけば、こう申し出ていた。


『……よかったら、明日の朝、娘さんを迎えにきましょうか』


申し出たというより、口から自然と滑り落ちてしまったという表現が正しい。

本当に、自然と出てきてしまったのだ。


『自分の通勤のついでですし、体調もまだ、完全には良くならないでしょうから』


自身が発した昨晩のセリフを思い出し、神崎はハンドルにもたれかかったまま、長嘆息をもらす。

わからなかった。自分は一体なぜ、あんなことを口にしてしまったのだろうか。

べつに、真由美の父親に恩を売るつもりは、神崎にはなかった。そもそも、恩を売ったところで何にもならない。

ならば純粋に、真由美のことが心配で出てきた申し出ということになる。

真由美が倒れ、弱り切っている場面を間近に見た神崎には、さすがに一晩寝たくらいで、真由美が完全復活できるとは、とても思えなかった。

たとえ痛みがひどくても、福原はまた、絶対無理をして出勤してくる。

大丈夫なのか。通勤中に、また急に意識を飛ばすようなことがないとも言い切れない。

そう考えると今も落ち着かなくなるため、やはり、迎えの申し出をしたことは正解だったようにも思う。

しかし。

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