不器用ハートにドクターのメス
「な、悩み……?」
「……おー。なんかあんだろ、仕事のことでも、なんでも」
言いながら、それにしても切り出し方が下手すぎたかと、神崎は苦い思いに駆られる。
もう少し自然な会話の流れで聞けなかったものか。
随分会話が不得意になってしまったような、そんな錯覚をおぼえ、神崎は自分自身に舌打ちをしてやりたくなる。
「……つーか、お前、なんでオペ看になろうと思ったの」
悩みはないかという、漠然とした質問を打ち消すように、神崎は続けて、回答の幅をせばめた質問を口にする。
看護師を志す人間はたいてい、初めに病棟勤務のイメージを持っていることが多いという印象を、神崎は受けている。
まれに手術部を意気揚々と希望する者もいるが、それはごく少数で、オペ看は恒常的に人数不足に陥っている。
しかも、一度手術部に入ると、人員確保のため、なかなか外の部署に出してもらえないというのが現実だ。
視線の先の真由美は、その質問を受けたとたん、表情を変えた。
少し眉が上がった程度の変化だったが、神崎には、まるで隠していたことを見抜かれてしまったとでもいうような、驚愕の表情に見えた。
「あ、あの……」
たっぷり時間をとってから、真由美はおずおずと口を開いた。
その様子に、自分とは真逆だ、と神崎は思う。
福原は、言葉をすぐに口にせずに、よくよく考えてから表に出す節がある。
こういったところからも、相手を気遣いすぎている性格がうかがえる。
自分は思ったらすぐ言うし、相手を傷つけようがなんだろうが怒鳴る。
言わない時は、相手の気持ちを推し量っているわけではなく、ただ面倒なだけだ。