不器用ハートにドクターのメス
「えっと……」
「……なんだ」
「……っ、も……もしかしたら、軽蔑、されてしまうかも、しれないんです、けど……」
軽蔑。そんな風に前置きされ、一体どんな話だと、神崎は胸をざわつかせる。
なにか、とんでもない事情でも抱えているのだろうか。
不穏な予感を抱えた神崎を前に、真由美は表情をこわばらせ、若干頬を引きつらせながら、重たい口を開いた。
「わたし……実は、手術部に来たかったわけじゃ、ないんです……」
真由美の口ぶりは、まるで死の宣告を下すかのような、深刻めいたものだった。
しかし、その宣告を受けた神崎は、拍子抜けした。
手術部以外を希望したのに、手術部に配属されてしまった。そんなのはよくあることだし、そんなことで、軽蔑などするはずがないからだ。
「あー……希望、通らなかったのか?」
「い、いえ……手術部を希望したことは、したんですけど……」
その回答に、神崎は再び、ん?と眉間にシワを寄せる。
……来たくなかったけど、希望はした?
明らかに矛盾している事象に、神崎は何も言うことができずに、真由美を見つめた。
真由美は、膝の上でぎゅっと拳を丸め、深く息を吸うと、続きの言葉を発した。
「本当は、病棟に行きたかったんです」
その後に連ねられたのは、真由美にしては珍しい、長ゼリフだった。
「でも……学生時代の、実習の時。指導者の方から、病棟は向いていない……って、言われたんです。人と関わること自体、向いてないって……実際、担当患者さんとも、うまく関係を築けなくって……どうしても看護師をやりたいなら、患者さんと関わることのない、手術部にいけばと、言われました……」