不器用ハートにドクターのメス

どう伝えたらいいものか。

目の前で自分を追い詰めまくっている真由美を、悩ましい気持ちで、神崎は見つめる。

すると、真由美ははっと息を吸い、かと思うと、思い切ったように、言葉を吐き出した。


「だから……先生にもすごく、申し訳ないと思ってるんです……」

「……へ」


神崎は思わず、間抜けな声を落としてしまった。

真由美の謝罪が、患者だけではなく、まさか自分に向くとは思っていなかったからだ。


「え……俺?」

「は、はい……こんなわたしなのに……その……先生は、すごく優しく接してくださって……」


一度顔を上げ、またすぐにうつむけた真由美は、もごもごと、こもった声で続きを口にする。


「気にかけていただいて……先生は、すごい人なのに。わたしなんかとは違う世界に立っているような人で……だから、そんな先生に声をかけてもらえたとき、ごめんなさいって……中途半端なのに、ごめんなさいって、いつも、思ってしまって……でも……っ、」


言葉をいったん詰まらせて、真由美は続ける。


「でも、わたし……同時にすごく、嬉しいんです……っ」


あまりにマイナスに向かって行く発言に、どこでストップをかけようかと思っていたのだが、突如出現した”嬉しい”というプラスの感情表現に、神崎は一瞬固まった。

嬉しい?なにが。

自分に、声をかけられることが――?

真由美のまとまりのない言葉を脳内処理するうちに、内側から心臓を押し上げられるような、奇妙な感覚に襲われ、神崎はぐっとくちびるを結ぶ。

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