いつか孵る場所
「桃子さんの実家は隣の市にある開業医でさ。桃子さんは妹さんと2人姉妹で後継ぎがいないんだ。
養子じゃなくてもいいから病院を継げる人をお父さんは探していたみたい。
そのお父さんと僕の父は同じ大学出身で支部の会合で会って親同士が勝手に決めたんだよ。
自分たちの子供を結婚させようって。本当は僕の方が次男だし良かったみたいだけど医学部に行ったところで中退しかねないから、兄さんにその話が」
ハルには想像もつかない、世界の話だった。
束縛だらけの世界。
自分は母がずっと働いていて寂しかったけどナツとそれなりに楽しく自由に過ごしていた気がする。
「最初は兄さんも僕と同い年の女の子といきなり結婚して生活できるのか不安だったらしい。しかも相手はまだ学生だし。一度会っただけでどんどん話を進められて、次に会ったのは結婚式当日。また一緒に住む新居も勝手に決められていた」
「…何だろ、聞いているだけで眩暈がする」
「だろ?まともに話したのが結婚式と披露宴が終わった夜。
会場にしたホテルのスイートで、二人朝まで延々と文句だけを言って一睡もせずに家に帰ったらしいよ。
兄さんが言うには逆にそれで二人の絆が深まったらしい。まあ、また桃子さんから色々聞くこともあると思うけどね」
「…そんな話を聞くと本当に不安になるんだけど」
ハルの言い分はもっともだ。
透は首を横に振って
「ハルには嫌な思いを出来るだけさせない。
もしあの親が何かしてくるなら僕はいつでも切り札を出すから。
…その前にあの桃子さんが手を打ちそうだけど」
まるで最終兵器は桃子、だ。
あのキラキラした目がハルの脳裏を掠めた。
養子じゃなくてもいいから病院を継げる人をお父さんは探していたみたい。
そのお父さんと僕の父は同じ大学出身で支部の会合で会って親同士が勝手に決めたんだよ。
自分たちの子供を結婚させようって。本当は僕の方が次男だし良かったみたいだけど医学部に行ったところで中退しかねないから、兄さんにその話が」
ハルには想像もつかない、世界の話だった。
束縛だらけの世界。
自分は母がずっと働いていて寂しかったけどナツとそれなりに楽しく自由に過ごしていた気がする。
「最初は兄さんも僕と同い年の女の子といきなり結婚して生活できるのか不安だったらしい。しかも相手はまだ学生だし。一度会っただけでどんどん話を進められて、次に会ったのは結婚式当日。また一緒に住む新居も勝手に決められていた」
「…何だろ、聞いているだけで眩暈がする」
「だろ?まともに話したのが結婚式と披露宴が終わった夜。
会場にしたホテルのスイートで、二人朝まで延々と文句だけを言って一睡もせずに家に帰ったらしいよ。
兄さんが言うには逆にそれで二人の絆が深まったらしい。まあ、また桃子さんから色々聞くこともあると思うけどね」
「…そんな話を聞くと本当に不安になるんだけど」
ハルの言い分はもっともだ。
透は首を横に振って
「ハルには嫌な思いを出来るだけさせない。
もしあの親が何かしてくるなら僕はいつでも切り札を出すから。
…その前にあの桃子さんが手を打ちそうだけど」
まるで最終兵器は桃子、だ。
あのキラキラした目がハルの脳裏を掠めた。