いつか孵る場所
翌日は穏やかな日曜日だった。
窓からはカーテン越しに優しい光が部屋全体を包んでいた。

昨日は確か夜遅くまでドライブして透の家に行って…。

- 透は? -

慌ててハルは起きようとした。
けれど。
体が動かない。

背中辺りに温かい感触を感じた。

- ああ、今日は呼び出しがなかったんだ… -

ハルの前で組まれていた透の腕をそっと外してハルは向きを変える。

心地良さそうに眠る透。
寝顔を見たのは初めてだ。
いつもハルが先に寝てしまい、起きたらいない。

- 案外まつ毛長いなあ -

そんな事さえも、わかっていなかった。
長い年月を離れて過ごし、再会したといってもまだ3週間ほど。
きっとこれからも、こんな穏やかに過ごせる時はあまりないと思う。
そう思うと少し胸が苦しい。

ハルは人差し指で透の唇に触れて、自分の体を少し上に這いずり、その唇にキスをした。

「!!」

その瞬間、体をがしっと掴まれ、逆に激しいキスを返された。
しばらくハルは呼吸も出来ないほどだった。

「ハル、おはよう」

ようやく透の目が開いた。
目が悪戯っ子のような目をしている。

「もう~!!」

ハルは透の胸を思わず叩く。

「ハルが誘ってきたんだろ?」

「もう!!」

ハルはプイ、と後ろを向いた。

「そんなことをしたら無防備すぎるよ」

透は後ろからしっかりハルを抱きしめる。

「今日も帰さないからね。覚悟しろよ、ハル…」
< 104 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop