いつか孵る場所
− さすがにちょっと…ヤバイかな −

月曜、透の家から出勤したハル。
足がやけに重くて歩くのさえ一苦労、といった感じだった。

透は起きたらもういなかった。
あの時の寂しさはいつになったら慣れるのだろうか…。

もっと一緒にいられたらもっと幸せになれると思うけど、そうはいかない。



「おはようございます」

ハルが職場に入ると返事がパラパラと返ってきた。

そのまま自分のデスクに座り、PCを立ち上げる。

「おはよう、淡路さん」

神立が声を掛けてくる。

「おはようございます」

「今週金曜日、部の歓迎会をするんだけど、どう?」

「後で確認してみます」

「お願いね。出来たら来て欲しいけど」

ハルは頷く。
そして手帳を広げる。
そこには透の勤務も書かれてある。
昨日、透が自分で記入していた。
スケジュール帳がいっぱいになる事なんてないのに透のおかげでいっぱい詰まった。
小さくても見やすい几帳面な字が透の性格を表している。



「へぇ〜、凄いスケジュール」



いきなり背後で声がしたのでハルは慌ててスケジュール帳を閉じた。

「そんなに見られたら困るの?」

頭上を見上げると、そこには大竹がいた。

「…見られたら困るとかそういう問題ではないです」

ハルはしっかりと手帳を抱きしめる。

「ふーん」

大竹は立ち去ったが、ハルの足は小刻みに震えている。



− 怖い… −

ハルは何度も呼吸をして震えているのがバレないように祈っていた。
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