いつか孵る場所
「桃ちゃん」

「なになに?」

「透に何か言われた?」

「何も」

火曜、水曜、木曜と連続して桃子はハルを会社前で待っていた。

「ハルちゃんとご飯食べたいだけ。
もし、透さんと食事するならいつでも言って!!
その日は来ないから…あ、でも道中心配だから家まで送るけど」

桃子の怒涛の勢いは止まらない。

「桃ちゃん、家はいいの?」

「ご心配なく!至さんのご飯はちゃんと作ってあるし。
あ、ハルちゃん、それか今日はウチに食べに来る?
きっと今からハルちゃんを連れて帰ったら至さん、泣いて喜ぶし!!」



そう言って連れて行かれたハル。



「うわぁ…」

想像以上に大きい一戸建ての家。
洋風の造りでこの家から桃子がドレスを着て出てきてもおかしくはないくらい立派だった。

桃子はバイクをガレージに止める。
そのガレージも車5台は軽く入る。
中をチラッと見たが、前に桃子が言っていたようにバイク10台はあるように思えた。
車も3台、入っていた。
自動車税やバイクの軽自動車税だけでどれくらい払うのか…。
即、そういう事を考えてしまうハルも自分自身に嫌気が差しそうだった。

「ハルちゃん、いらっしゃい」

笑った顔が透にそっくりの至が出迎えてくれた。

「遅い時間にすみません、お邪魔します」

「どうぞ」



1階のリビングに通される。

ダイニングテーブルにはすでに食事が用意されていた。

「こんな事もあるかと思って多めに作っておいて良かった」

桃子は嬉しそうに笑った。
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