いつか孵る場所
至と桃子との食事はほんわかしていて楽しかった。

透との高校時代の思い出とかを話すると二人はうんうん、と何度も頷いて楽しそうに聞いてくれる。

至は透の小さい時の話をしてくれた。

小さい時から聡明で、至が引け目を感じるくらい完璧な子供だったらしい。
反面、今でも精神的に幼い部分があって、肝心な事を短絡的に考えて、周りから呆れ返られる事もあるらしい。

ハルにとっては意外な一面だった。

そんな楽しい会話が続いた。

また桃子の手作りの料理は美味しくてハルは何回も美味しい!と言うと桃子は上機嫌でデザートまで出してくれた。

そんな食事もそろそろ終わりの頃。



「やっぱり、そうだったのね…」

ハルは大きくため息をつくと桃子は両手を振って

「あ!気にしないで。
私も楽しんでしている所もあるし!」

結局、桃子が毎日迎えに来るのは透のお願いと知ってハルは何度もため息をついた。

− そんなにされると気を使っちゃう −

そんな心の叫びが聞こえたかのように

「うん、しばらくは桃ちゃんの護衛が必要かなって思うな。
あまり気を使わず、仕事の後のサークル活動と思えば良いよ」

至が口を挟んだ。
ハルは至を見つめる。

「透が動けたら一番良いけどね。
病院でも1、2を争うくらいの忙しい立ち位置だから、どうしても無理が出てくる。
透も桃ちゃんなら安心だからお願いしたんだろうと思うけど」

「そうそう、透さんも結構信頼してくれてるし」

桃子の身振り手振りのオーバーアクションに思わずハルは笑ってしまった。

「まあハルちゃん、とにかく頼って…!頼って!」

桃子はニコニコ笑っていた。
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