いつか孵る場所
「透！大丈夫？」

初めて見る透の号泣にハルは慌てふためいた。
ソファーの上に跪座をして透の顔を胸に抱きしめる。

「…ごめん、しばらくこのままでいて」

ハルは優しく透を抱きしめている。
まるで小さい子供の様に泣く姿は、少し母性本能を擽られる。
今まで人間離れをしたサイボーグのような所があって、この人に赤い血は流れているのか？と思う時があったけれど。
ようやく、本当の心を見せてくれた気がする。
ハルは何度も透の髪の毛を撫でた。



どれくらい時間が経ったのだろう。



ようやく透が顔を上げる。

「大丈夫？」

ハルの優しい声が透の耳元で聞こえる。
まだ目に涙をいっぱい溜めているが、透は微笑んで頷いた。



「ハル」

その声にハルは少し首を傾げると

「お腹空いた」

透のお腹の音が切実に聞こえ、思わずハルは吹き出した。

「…ご飯、食べてなかったんでしょ?」

「うん、今週はほとんど」

「何か作るわ」

「ありがとう」

二人は顔を見合わせて笑った。
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