いつか孵る場所
「へえ、良かったねえ」

拓海は優しく微笑んだ。

ナツが入院した翌日。

透はお昼休み、屋上にいるだろう拓海を訪ねるといつものように日差しの当たる場所でぼんやり過ごしていた。

まだ2月末なので外は寒いけど、今日は風も弱く、日差しが暖かかった。

「優しいお兄さんだね。淡路さんも良かったよ。妹さんも大事に至らなくて」

拓海は心の底からそう言った。

「じゃあしばらくは学校に来られないんだねえ」

「そうなると思うよ」

少し残念そうな透を見て、拓海は

「好きになったの?淡路さんの事」

その問いかけに一瞬、驚いた様子を見せた透は目を伏せて

「…わからない」

困惑した表情を見せた。

「好き」という気持ちがいまいちよくわからない。

「そっか…」

拓海もそれ以上は聞かなかった。
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