いつか孵る場所
− 何で呼び出されたのかわからない −

透はムスッとして院長室にいた。

目の前にはクソ親父、この病院の院長。



「お前の彼女は【淡路 ハル】さんか?」

開口一番、それだったので透の眉間に皺が寄った。

「それが何か?」

父は大きくため息をついた。

「さっき、上司の方から連絡があって、会社で倒れたそうだ」

「…えっ」

動揺した声が部屋に響く。

「お前、彼女が妊娠してるの、知ってるのか?」

「…それは何となく。
まだ本人の口からは聞いていないけど」

「じゃあ何故、脱水に気が付かなかった?」

「…脱水?」

「一緒に住んでるんじゃないのか?」

父の顔に怒りがこみ上げている。
透は首を横に振って

「半同棲みたいな感じ。
まだ完全に一緒には住んでいない。
先週はこっちが忙しすぎて…」

「言い訳にしかならん」

父はバッサリ切り捨てた。

「俺からすれば妊娠させるくらい好きな女の体調を、何故管理出来ん?
そんな事が出来ないなら患者の管理など尚更出来んわ!」

秘書がビクッとするくらい、大声を上げた。

「彼女が退院したら、すぐに家に来い。
日付が変わろうと構わん。
当直日だったらその翌日には必ず来い。
お前にはちゃんとケジメを付けてもらう。
逃げたら今までの事もこれからの事も何もかも全て許さん!」
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