いつか孵る場所
「ほーぅ」

更に至からも呼び出され、事情聴取された。

「さっき、父さんの秘書に確認したら、総合受付が『高石の彼女』=『親父の彼女』と勘違いして繋いだらしいよ。
普通に考えたら結婚してない透なのにな。
それだけ父さんも遊んでるって事だな」

至は楽しそうにニヤニヤしている。

「まあ、これで親に絶対に会わなければならなくなったから良かったじゃないか」

楽天的に言う至を透は睨む。

「ハルが行けないんだよ。
僕は何度も行こうとはしたけど、ハルが無理なんだ」

「さすがに妊娠したら避けて通れないのはわかるでしょ、ハルちゃんも。
そこは嫌でも行ってもらわないとね。
透が頑張って説得するしかない」

透もそれはわかっている。
わかっているけど、上手くいかない。
しばらく二人は黙り込んで、その沈黙を破ったのは至だ。

「でもさ。
父さん、電話で断ることも出来たと思うんだよね。
敢えて話を聞いて、受け入れたんだろ。
案外、そういうのを待っていた部分はあると思うけど、出来婚はかなり怒られると思うよ~…
先にきちんと言えば別に怒り狂うこともなかったと思うし、なんせ透の焦り過ぎだな。
お前らしくもない」

「…かったの」

「はい?」

「誰にも取られたくなかったの!ハルを」

顔を真っ赤にして言う透を見て至は手を叩いて喜んでいた。

「お前にもそういう感情があるんだ!
じゃあ、僕からあと一つ、言っておこう」

至は透の肩をガシッと掴んで

「ちゃんとプロポーズしろよ」

「…わかってるよ。昨日、色々と準備が整ったから。
本当は今週中にはきっちりするつもりだったんだ。
思っていたよりもちょっと早くなっただけ」

透の瞳の中に鋭い光を至は見た気がした。
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