いつか孵る場所
透はしばらくの間、学校の帰りに病院へ通った。
父に会うかもしれないと思い、ドキドキしながら。
まず会うことはないとは思うけど、そういう気持ちを抱いてしまう透は家族関係に疲れを感じている。
何とも言えない虚無感。
病室に行くとハルは慣れた様子でナツのお世話をしていた。
「こんにちは」
「高石くん!」
ホッとしたようにハルは笑った。
初めて見たような笑顔に透はドキッとする。
「ありがとう、高石くんのおかげでナツも少しずつ良くなってきたよ」
ベッドで寝ているナツの様子は数日前とは違ってだいぶ良くなっているように思えた。
「良かった」
透は胸を撫で下ろした。
「高石くんのお兄さんも時々様子を見に来てくれるよ」
「そう…」
透は微笑んだ。
きちんと小児科の担当医が付いてるのに、どうも気になるらしい。
至の事はあまりわからなかったけど、心優しい人間なのかもしれない。
そう思うと少し気持ちが穏やかになった。
入院して1週間でナツは退院した。
その2日後にはハルも登校してきた。
「本当にありがとう」
透を見掛けるとすぐに駆け寄ってハルはお礼を言った。
「いえいえ」
そう微笑んだ透。
少しだけ、胸が痛くなった。
今後はそれほど会話もなくなるかもしれない。
そう思うと寂しい、という感情が溢れてきてたまらなくなった。
「高石くん…?」
ハルが透を覗き込むと
「えっ!?」
ハッと我に返った。
危うく孤独の闇に陥るところだった。
「また何か困る事があればいつでも言って」
そう返す事に精一杯だった。
−好き…?−
透は拓海の言った言葉を思い出した。
きっと、そうなんだろうな。
離れたくない。
でも、どうして良いのか…。
透は天を仰いだ。
父に会うかもしれないと思い、ドキドキしながら。
まず会うことはないとは思うけど、そういう気持ちを抱いてしまう透は家族関係に疲れを感じている。
何とも言えない虚無感。
病室に行くとハルは慣れた様子でナツのお世話をしていた。
「こんにちは」
「高石くん!」
ホッとしたようにハルは笑った。
初めて見たような笑顔に透はドキッとする。
「ありがとう、高石くんのおかげでナツも少しずつ良くなってきたよ」
ベッドで寝ているナツの様子は数日前とは違ってだいぶ良くなっているように思えた。
「良かった」
透は胸を撫で下ろした。
「高石くんのお兄さんも時々様子を見に来てくれるよ」
「そう…」
透は微笑んだ。
きちんと小児科の担当医が付いてるのに、どうも気になるらしい。
至の事はあまりわからなかったけど、心優しい人間なのかもしれない。
そう思うと少し気持ちが穏やかになった。
入院して1週間でナツは退院した。
その2日後にはハルも登校してきた。
「本当にありがとう」
透を見掛けるとすぐに駆け寄ってハルはお礼を言った。
「いえいえ」
そう微笑んだ透。
少しだけ、胸が痛くなった。
今後はそれほど会話もなくなるかもしれない。
そう思うと寂しい、という感情が溢れてきてたまらなくなった。
「高石くん…?」
ハルが透を覗き込むと
「えっ!?」
ハッと我に返った。
危うく孤独の闇に陥るところだった。
「また何か困る事があればいつでも言って」
そう返す事に精一杯だった。
−好き…?−
透は拓海の言った言葉を思い出した。
きっと、そうなんだろうな。
離れたくない。
でも、どうして良いのか…。
透は天を仰いだ。