いつか孵る場所
「なあんだ、思ったよりも真面目だあ」

一見、ギャル風看護師が呟く。

「私達の間では透先生は親への復讐の為に医者になって生きているっていう話があったけど、ちゃんとした理由があるんだあ」

「…そんな噂もあるんですか」

脱力しそうになった。

− やっぱりこの人達、怖い −

「まあでも透先生」

河内が口を開く。

「今回の騒動はプライドの塊のようなご両親…すみません、こういう言い方」

透は頭を左右に振った。

確かにそうだから。

「そんなご両親に対しての反逆でしょ?
至先生は親の言いなりで医者になることも結婚も決めたけど、透先生は自分の意志で医者になり、結婚も…。
子供を先に作ったのは順番が逆で魂胆ミエミエですけど。
そこまで自分の考えを押し通したなら十分じゃないですか。
まあ…今後、親戚の風当たりが強いとは思いますが頑張ってください」

透はため息をついて

「両親はまあ、最後にはどうにかなるとして…。
親戚…どうしようかなあ」

真剣に頭を抱えて悩み始めた。
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