いつか孵る場所
「透先生の親戚ってそんなにウルサイんですか？」

透が立ち去ってからギャル風看護師は河内に聞いた。

「至先生から聞いた話では院長先生には他に３人の兄弟がいてね。
長男は大学の名誉教授、次男は有名企業の会長。
三男の院長先生は雇われといえども総合病院長。
四男は現役の大学教授だったかなあ。
その子供達に何かあると集まって宴会と…品評会」

若い看護師達が顔を見合わせた。

「品評会って何ですか？」

「例えば、今度透先生が結婚するけど、お相手はどこの大学出身か、家柄は？とかネチネチ本人に聞いたりするんだって。
特に長男、次男がキツイみたい」

さっき病室から戻ってきた看護師は途中から話を聞いていたが辟易して耳を塞いだ。

「至先生、よく堪えてますよね。
透先生の反発は当然かも」

ギャル看護師は苦虫を潰したような顔をしている。

「至先生は温和で世渡り上手いからね。
敵を出来るだけ作らない。
奥様も文句なしの家柄だしね。
透先生は小さい時からずっとおかしいと思っていたみたいで、今でも反発しているみたいよ。
これまでも高校、大学受験でことごとく親の言いなりにならなかったみたいだし。
ただ、今回はどうなるかしらね。
透先生が先に手を打った、といえば打ったけど…
火に油を注いだ感じだと至先生は言っていたわ」

先日、珍しく至が浮かない顔をして河内に愚痴っていたのを思い出しながら河内は言った。
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