いつか孵る場所
3月、期末試験も終わり、休みに入った。
次、学校に行くのは終業式だ。
透は予備校に行かず、ひたすら自力で勉強していた。
たまに受ける模試もそれなりの結果を出している。
漫画家になろうと思いつつも頭の体操のつもりでどの教科も満遍なくこなしていた。
コンコン、と部屋のドアをノックされた。
「はい」
手を止めて振り返ると至が部屋に入ってきた。
今日は日曜日。
至も一応は休みだ。
いつ病院から連絡があるかはわからないけど。
「大学、どこ受けるか決めた?」
「…まだ」
両親から嫌というほど言われて、更に至もそうなのかと思うとついついムッとしてしまう。
「透は何をしたいの?」
「えっ…?」
至はニコニコしながらベッドに腰を掛ける。
「普通に会社で働きたい?それともデパートなどの店頭に立って接客?教師も出来るだろうし…」
唐突に言い出す至をポカンと見つめる。
「自分の好きな事をしなよ。人生1回きりだし」
自分の好きな事…。
透は俯いた。
好きな…
「漫画家」
思わず呟いた。
「漫画家かあ!透、絵が上手だもんね!」
至は嬉しそうに言った。
「兄さんは」
透は今まで聞けなかった事を聞いてみる。
「どうして医者になろうと思ったの?」
至はしばらく透を見つめて大きく息を吐いた。
「最初は父さんの言いなりで中学から高校、大学に進んだよ。まあ父さんの言うことを聞いてそれなりに結果を出したら良いかなって」
至はベッドに寝転んだ。
「医学部で勉強して、色んな人に出会って、父親より尊敬出来る考え方の先生に出会って、今の僕がいる。最初は親の敷いたレールに乗ったけど、今の僕は自分の意志で医者をしているよ。一人でも多くの患者さんの命と健康と心を守りたい。色々と経験をしたから余計にそう思う」
次、学校に行くのは終業式だ。
透は予備校に行かず、ひたすら自力で勉強していた。
たまに受ける模試もそれなりの結果を出している。
漫画家になろうと思いつつも頭の体操のつもりでどの教科も満遍なくこなしていた。
コンコン、と部屋のドアをノックされた。
「はい」
手を止めて振り返ると至が部屋に入ってきた。
今日は日曜日。
至も一応は休みだ。
いつ病院から連絡があるかはわからないけど。
「大学、どこ受けるか決めた?」
「…まだ」
両親から嫌というほど言われて、更に至もそうなのかと思うとついついムッとしてしまう。
「透は何をしたいの?」
「えっ…?」
至はニコニコしながらベッドに腰を掛ける。
「普通に会社で働きたい?それともデパートなどの店頭に立って接客?教師も出来るだろうし…」
唐突に言い出す至をポカンと見つめる。
「自分の好きな事をしなよ。人生1回きりだし」
自分の好きな事…。
透は俯いた。
好きな…
「漫画家」
思わず呟いた。
「漫画家かあ!透、絵が上手だもんね!」
至は嬉しそうに言った。
「兄さんは」
透は今まで聞けなかった事を聞いてみる。
「どうして医者になろうと思ったの?」
至はしばらく透を見つめて大きく息を吐いた。
「最初は父さんの言いなりで中学から高校、大学に進んだよ。まあ父さんの言うことを聞いてそれなりに結果を出したら良いかなって」
至はベッドに寝転んだ。
「医学部で勉強して、色んな人に出会って、父親より尊敬出来る考え方の先生に出会って、今の僕がいる。最初は親の敷いたレールに乗ったけど、今の僕は自分の意志で医者をしているよ。一人でも多くの患者さんの命と健康と心を守りたい。色々と経験をしたから余計にそう思う」