いつか孵る場所
「兄さんか…。いや、兄さんらしい表現だな」

家に帰るとハルをソファーに寝かせる。
透はその横でハルの髪の毛を撫でていた。
事情を聴いた透は苦笑いをするしかない。
確かに至の言う事はほぼ当たりなのだから。

「で、ハルはそのまま呼んでいるんだ」

「…うん。妙に落ち着く。きっと名前が決まるまではそう呼ぶと思う」

「じゃあ、出来るだけ早く名前を決めなくっちゃね…。早くてもあと3ヶ月くらいは掛かると思うけど」

透はハルの唇にそっと口づけをした。

「まあ確かにハルの状態も良くないしね。
ばくだんちゃん、ねぇ…」

「…まさか気に入ったの?」

「絶妙なネーミングだと思って」

透はハルを抱き起こし、後ろからその体を自分の腕にしっかりと抱き締める。
右手をハルのお腹に添えた。

「あ…透」

ハルも右手を透の手に重ねた。

「まだそんなにお腹、大きくなってないはずなのに、結構苦しくて…。
多分、仕事とかで穿いてるパンツ類、全滅っぽい」

残念そうにハルが言うと

「そっか…また服を用意しないとね。
ゆったりしたものなら産後もいるだろうし。
また外商に来てもらったら良いよ」

ハルの頭の中に人が良さげな笑顔を見せる神楽の姿が浮かんだ。

その瞬間、透の携帯が揺れる。
透はすぐに取った。

「はい…うん。
じゃあ明日、来てあげてよ。
ちょうど良かった、ハルの服も何着か用意して欲しいんだ。
ゆったり目のものを。
うん、頼んだよ」

通話を切って

「明日、母さんが来るって」

ハルは目を見開いて後ろを向いた。

「うん…嫌な気持ちもわかるんだけどね。
話したい事があるんだって。
朝から来て話してから、昼から外商に色々持ってきて貰うからって」



それよりも…



透はハルのワンピースを捲り上げる。

「お腹、確認しようかなあ」

「き…昨日も見たじゃない!」

ハルは慌てて裾を戻そうとする。

「どれだけ大きくなったか、確認しよっと」

少し意地悪な笑みを浮かべて透はハルの髪の毛にキスをした。
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