いつか孵る場所
「うわあ…うわあ。
ラブラブで良いなあ〜!
羨ましい」

哲人はニヤニヤしながら両手で頬を押さえた。

「でも奥さんは、透と再会した時は彼氏とかいなかったの?
透が一方的に感情をぶつけているとしか思えない」

そんな哲人の問いにハルは少し迷った。
透をチラッと見ると

「僕も聞いておきたい」

と言うのでハルは深呼吸を1回して

「透に出会う少し前に上司から付き合いたいって言われていました。
でも…結婚するには何かが不安で。
そんな時、同窓会があって、ある子に迷うなら止めといた方が良いって言われて。
色々と考えているうちに精神的に参ったみたいで体調を崩して…透に助けられました」

ハルは少し照れながら透を見つめる。

「…ずっとどうしているのか気にはしていました。
意識がボンヤリする中に白衣を着た透を見て、ああ、やっぱりお医者様になったんだなあって。
凄く嬉しかったし、胸がソワソワし出して…
昔の気持ちが…抑えていたのに溢れだしていました。
仕事の合間に様子を見に来てくれるのが待ち遠しくて。
付き合おうって言われた時は舞い上がる自分の気持ちを必死に抑えました。
もし、また別れたら…もう二度と立ち直れないから。
…でもまさかこんなに早く赤ちゃんが出来て入籍するとは思いませんでしたが、赤ちゃんが来てくれたのは嬉しかったです。
…きっともう二度と離れたら駄目だから離さないように来てくれたんですよね」

「うわ〜!うわ〜!そんな恋をして俺も早く結婚したい〜!」

「早くして落ち着きなさい」

日下の突っ込みに苦笑いしか出来ない哲人だった。

「まだ…僕たち再会して2ヶ月経っていないんだ。
不思議だよね、縁って」

日下は微笑んで

「良かったな、高石。
あの時の辛い想いが報われて。
あとは数ヵ月後に無事に子供が産まれてくるのを祈るだけだな。
今日は良い報告を聞けて良かったよ」
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