いつか孵る場所
日下と哲人とはその店で別れ、ナツの下宿先に向かった。
部屋に溢れた本を見て透は微笑む。
自分もそうだった。
本にどれだけのお金を注ぎ込んだか。
今もそうだが。
「病院の見学には行ってるの?」
卒後の研修先の事を透が聞くと
「この辺りの病院は回りましたよ」
「そう。こっちにするの?」
「ここに住んで、案外気に入ってます」
これまた自分と同じ答え。
だが…
「夏休み、一度こっちにおいでよ」
「え」
「うちに見学においで」
「いや、でも…」
「交通費の心配?」
ナツは頷く。
「それは出すから。
ハルもきっと会いたいと思うし、帰っておいで」
揺さぶってみる。
哲人からは真面目で優秀な学生と聞いた。
将来の事を見据えて初期研修の段階で連れ戻すのもありだと言われた。
「お姉ちゃん…」
ナツはハルを見つめるとハルも頷いた。
「透がそう言ってるんだし。
色々と見た方が良いって」
それと…
ハルが続けた。
「多分、透のご両親と一緒に住むというか、家を二世帯にして住もうという案があって。
今のアパートはそのうち引き払う予定」
ハルの発言に透の目が丸くなる。
「じゃあ、帰りづらくなるかなあ」
ナツは少し残念そうにすると
「それは遠慮せずに帰ってきたらいい。
僕の両親はなっちゃんの部屋を作るらしいよ」
「ええっ、そうなの!?
会った事、ないのに」
「うん、強引だからね。
僕の親は。
だからそれも含めて一度会いにおいで。
といっても夏ならまだ家は建ててる途中だと思うけれど」
その後、今か今かと待っている父、純に電話すると仮住まいはもう押さえてあって、来週すぐにでも工事開始出来る状態との事だった。
どんなに準備が早いのかと思う。
多分、勝手に話を進めていたと思われる。
部屋の間取りとか考えるのが煩わしいので家の話が出た時に適当にしておいて欲しいと言っておいたら最初の案でいったらしい。
確かにあの間取り、悪くはなかった。
設計を頼んだ段階で否を出せないようなものを作っていたらしい。
不動産関係のツテだろうが、全て先に手を打たれている感が否めない。
完全にヤラレタな。
透は通話を切って思わず苦笑いをした。
部屋に溢れた本を見て透は微笑む。
自分もそうだった。
本にどれだけのお金を注ぎ込んだか。
今もそうだが。
「病院の見学には行ってるの?」
卒後の研修先の事を透が聞くと
「この辺りの病院は回りましたよ」
「そう。こっちにするの?」
「ここに住んで、案外気に入ってます」
これまた自分と同じ答え。
だが…
「夏休み、一度こっちにおいでよ」
「え」
「うちに見学においで」
「いや、でも…」
「交通費の心配?」
ナツは頷く。
「それは出すから。
ハルもきっと会いたいと思うし、帰っておいで」
揺さぶってみる。
哲人からは真面目で優秀な学生と聞いた。
将来の事を見据えて初期研修の段階で連れ戻すのもありだと言われた。
「お姉ちゃん…」
ナツはハルを見つめるとハルも頷いた。
「透がそう言ってるんだし。
色々と見た方が良いって」
それと…
ハルが続けた。
「多分、透のご両親と一緒に住むというか、家を二世帯にして住もうという案があって。
今のアパートはそのうち引き払う予定」
ハルの発言に透の目が丸くなる。
「じゃあ、帰りづらくなるかなあ」
ナツは少し残念そうにすると
「それは遠慮せずに帰ってきたらいい。
僕の両親はなっちゃんの部屋を作るらしいよ」
「ええっ、そうなの!?
会った事、ないのに」
「うん、強引だからね。
僕の親は。
だからそれも含めて一度会いにおいで。
といっても夏ならまだ家は建ててる途中だと思うけれど」
その後、今か今かと待っている父、純に電話すると仮住まいはもう押さえてあって、来週すぐにでも工事開始出来る状態との事だった。
どんなに準備が早いのかと思う。
多分、勝手に話を進めていたと思われる。
部屋の間取りとか考えるのが煩わしいので家の話が出た時に適当にしておいて欲しいと言っておいたら最初の案でいったらしい。
確かにあの間取り、悪くはなかった。
設計を頼んだ段階で否を出せないようなものを作っていたらしい。
不動産関係のツテだろうが、全て先に手を打たれている感が否めない。
完全にヤラレタな。
透は通話を切って思わず苦笑いをした。