いつか孵る場所
「あれ、珍しい」
土曜日夕方のK-Racingに透はバイクでやって来た。
「たまには動かさないとね」
愛車のFZ8を祥太郎に預け、オイル交換を頼んだ。
「で、先生。
あの後、どうなったの?」
ニヤニヤ笑う拓海の弟、祥太郎。
「それを報告に来ました」
そう言って店内に入る。
「いらっしゃい〜!」
相変わらず真由はモデルのような素晴らしいスタイルにスタッフジャンパーを羽織って、にこやかに出迎えてくれた。
「はい、これ」
「いつもありがとう〜!」
真由は透からお土産を受けとる。
「あれ、学会?」
「ううん、大学に用事があって…。
さっき帰ってきたところなんだ」
「で、で???」
祥太郎がバイクを奥のピットへ入れてからすぐに透の元へやってくる。
「オイル交換は?」
「ウチの将来有望な若手スタッフに任せた。それよりも先生の話を」
祥太郎は透の隣に座り、真由はカウンター越しにそっとお茶を透に差し出す。
そして向かいに座り
「透君、どうなったの?」
真由はなぜかドキドキしている。
それが透にもよくわかるので思わず苦笑い。
「…先週、入籍した」
「「は?」」
真由と祥太郎の声が重なる。
「昨日から有給を取ってハルの妹に会いに行ったんだ。
僕の母校の医学生をしていて。入籍報告とか色々」
「ちょ…ちょっと待った!!」
真由よりも祥太郎の方が驚いている。
「え、結局付き合ったの?」
祥太郎の手が震えている。
「うん、前にここに来た日に」
「なんだ~、すぐに教えてくれてもいいのに」
真由は頬を膨らませた。
「ごめん、色々あって」
「色々って、まさか彼女が妊娠したとか?」
祥太郎は恐る恐る聞いた。
透は顔色一つ変えずに
「まあ、それもある」
「「はい!??」」
また、声が重なった。
「ちょっと待って…付き合い始めたのって1ヶ月ほど前じゃ」
思わず祥太郎が指を折り始めた。
「うん。そうだね」
「どんなに早いんだよ~」
「まあ、お互い歳とってるから子供は早い方がいいでしょ?」
と言って、透は目の前にいる真由が俯いたまま動かなくなっているのに気が付いた。
「…真由ちゃん?」
「うっ…うっ…」
「ええっ、何?」
真由が大粒の涙を流している。
「もう、ずっと心配していたのよ~…
何も連絡がないし、ひょっとしてダメになっちゃったんじゃないかとか。
それが…いつの間にか結婚して赤ちゃんまで出来たとか、私、夢を見てるんじゃない?」
と言って机に伏して号泣しだした。
来店していたお客さんが皆驚いてこちらを見ている。
「真由ちゃん、ごめんね。
遅くなってしまったけれど、それが僕の報告」
土曜日夕方のK-Racingに透はバイクでやって来た。
「たまには動かさないとね」
愛車のFZ8を祥太郎に預け、オイル交換を頼んだ。
「で、先生。
あの後、どうなったの?」
ニヤニヤ笑う拓海の弟、祥太郎。
「それを報告に来ました」
そう言って店内に入る。
「いらっしゃい〜!」
相変わらず真由はモデルのような素晴らしいスタイルにスタッフジャンパーを羽織って、にこやかに出迎えてくれた。
「はい、これ」
「いつもありがとう〜!」
真由は透からお土産を受けとる。
「あれ、学会?」
「ううん、大学に用事があって…。
さっき帰ってきたところなんだ」
「で、で???」
祥太郎がバイクを奥のピットへ入れてからすぐに透の元へやってくる。
「オイル交換は?」
「ウチの将来有望な若手スタッフに任せた。それよりも先生の話を」
祥太郎は透の隣に座り、真由はカウンター越しにそっとお茶を透に差し出す。
そして向かいに座り
「透君、どうなったの?」
真由はなぜかドキドキしている。
それが透にもよくわかるので思わず苦笑い。
「…先週、入籍した」
「「は?」」
真由と祥太郎の声が重なる。
「昨日から有給を取ってハルの妹に会いに行ったんだ。
僕の母校の医学生をしていて。入籍報告とか色々」
「ちょ…ちょっと待った!!」
真由よりも祥太郎の方が驚いている。
「え、結局付き合ったの?」
祥太郎の手が震えている。
「うん、前にここに来た日に」
「なんだ~、すぐに教えてくれてもいいのに」
真由は頬を膨らませた。
「ごめん、色々あって」
「色々って、まさか彼女が妊娠したとか?」
祥太郎は恐る恐る聞いた。
透は顔色一つ変えずに
「まあ、それもある」
「「はい!??」」
また、声が重なった。
「ちょっと待って…付き合い始めたのって1ヶ月ほど前じゃ」
思わず祥太郎が指を折り始めた。
「うん。そうだね」
「どんなに早いんだよ~」
「まあ、お互い歳とってるから子供は早い方がいいでしょ?」
と言って、透は目の前にいる真由が俯いたまま動かなくなっているのに気が付いた。
「…真由ちゃん?」
「うっ…うっ…」
「ええっ、何?」
真由が大粒の涙を流している。
「もう、ずっと心配していたのよ~…
何も連絡がないし、ひょっとしてダメになっちゃったんじゃないかとか。
それが…いつの間にか結婚して赤ちゃんまで出来たとか、私、夢を見てるんじゃない?」
と言って机に伏して号泣しだした。
来店していたお客さんが皆驚いてこちらを見ている。
「真由ちゃん、ごめんね。
遅くなってしまったけれど、それが僕の報告」