いつか孵る場所
数日後。

三学期の終業式はあっという間に終わり、校内はどことなく解放感に包まれていた。

そんな中、ドキドキして心臓が飛び出そうな透。

帰ろうとするハルの少し後ろを歩いた。

人気が少なくなった廊下に差し掛かると、

「淡路さん」

声の震えを出来るだけ抑えて名前を呼んだ。

ハルはゆっくりと振り返る。

「ちょっと、いい?」

ハルは頷くと透の後を歩いた。

学校の南館は特別教室が並んでいるのでほとんど人気がない。

「なっちゃんは元気にしてる?」

突然の問いにハルは目をパチパチさせていたがやがて

「うん、元気にしてる」

と答えた。

「そう、良かった」

一瞬、視線を下に落として呼吸を整え、キリッとした目をハルに向けた。

ハルは固まる。

「僕、淡路さんの事が好きだ」



ハルは更に固まる。



しばらく二人は見つめ合っていたが、耐えきれなくなったのは透。

視線を下に落として

「もし、嫌な気持ちにしてしまったらごめん。嫌なら忘れて」

クルッとハルと反対方向に向き、歩き始めた。

緊張で足がガクガクする。

もう、このまま消えたい。
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