いつか孵る場所
「失礼します」

病室に移動してしばらくしてから。

ノックが聞こえて入って来たのは黒谷。

「おめでとうございます」

ハルに頭を下げる。

「ありがとうございます」

黒谷は透がいない事を確認してから

「見てください」

とカメラを差し出した。
ハルが覗き込むと…。

そこには新生児室で新生児のチェックや沐浴させている姿、黒谷が一番撮りたかったであろう透が泣いている姿。

「またデータ、お渡ししますね!」

黒谷の笑顔が本当に可愛くてハルは何だか励まされた。

「本当に先生、幸せそうでしたよ。
何をするにも。きっと良いパパになりますよ」

「…何してるの」

いつの間にか透が戻ってきていた。

服がいつもの白衣に戻っている。

黒谷は慌ててカメラを隠し、

「回診のついでに寄ってみました。
…奥様が心配だったので」

何故か横歩きで移動し、部屋を出ようとした時。

「今日はありがとう」

透が頭を下げると

「…先生、いつも助けられているのは私の方です。
ありがとうございます。
そして本日はおめでとうございます。
これからも幸多くあられる事を願います」

黒谷は美しいお辞儀を見せて立ち去った。
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