いつか孵る場所
同窓会当日

「迎えに行くよ」

そう言って愛車のポルシェで迎えに来てくれた透は質の良いスーツを着こなしていた。

一目見て、全てに二重丸を付けたいくらいだ。

「独身だからこういうの、出来るんだと思うよ」

褒め称えたらそう返ってきた。

「モテるんじゃない?」

「モテる、というのとちょっと違うかも。タカられる、という方に近いかなあ」

思わず真由は声を出して笑った。

「本当に色んな人が来るけどね。勤務医がそんなに良いお給料貰っているなんて稀だと思うよ。拘束される時間の割には合わない」

「そう言う割には高いクルマに乗っていると思うけど…」

真由は車内全体を見回す。

「独身だからね。結婚して子供が沢山出来たら国産のワンボックスにする」

「意外と庶民的なんだ」

「うん、それが夢」

そう言って微笑む透。

美男とは言い難いけれど、優しい顔つき、雰囲気を持っていて小児科医とは天性なのだろう、と真由は思っている。

実際何度か三つ子の泰樹は入院でお世話になっていて、仕事で忙しい総一が看護出来ない分、真由が一人で24時間看ていたが、よく回診で来てくれていた。

その時、親子共々どれだけ安心させてくれる言葉をくれたか、数え切れない。

「じゃあ早く結婚しなさいよ〜」

手をヒラヒラさせて真由が言うと

「自分が納得出来る相手がいたらすぐにでも結婚してるよ」

「…理想、高そう」

「僕、そんなに高くないよ」

「いや、どうだろうね〜!」

「本当に、そうだよ。ただ、周りが五月蝿いからね。だから結婚しない」

寂しそうに言った透の横顔。

そうだ。

彼は…。



真由は遠い昔を思い出していた。

もう20年くらい前の話。
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