いつか孵る場所
「なんですって!?」

正月早々、家に母のヒステリックな声が響く。

「だからK大学にします」

透は家族の前で淡々と語る。

「独り暮らしをして、学費は奨学金を受けようと思います」

K大学はこの辺りからだと新幹線を使っても3時間くらい、飛行機で1時間くらいの場所。

「わざわざそこへ行く意味は?」

さすがに父も苦虫を潰したような顔をしている。

国立大ではあるけれど、地元の国立大でも良いはず、と両親は思っているに違いない。

「…独りになりたい」

医者を目指さない、とは言っていない。

ただ…ただ独りになりたい。

それだけ。



「…父さん、母さん」

至が口を開いた。

「透の好きにさせてあげて。お願いだから。…後の事は僕が全部背負うし、透一人くらい、親の思う通りにならなくてもいいでしょ?」
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