いつか孵る場所
透がいなくなると急にポツンと一人になった感じがしてやっぱり帰ろうかな、なんて思ってしまう。

− …え? −

入口が開いたと思ったらそこから入ってきたのはハル。

約20年振りに見るハルは全然変わっていない。

高校でもそれほど目立っていなかったから入ってきても周りと軽く挨拶するだけで辺りを見回す。

立食パーティー式なので隅に椅子が設けられていてハルはそこに座った。

− もう…こんな時にどうしてオンコールなのよ −

思わず舌打ちしたくなる。

真由は真っ直ぐハルの元へ向かった。



「久しぶり」

真由の声に一瞬、戸惑ったハル。

「あ…お久し振りです」

更に一層、柔らくなった雰囲気。

高校の時は透経由で数回話しただけだ。

クラスも一緒になった事はない。

「元気にしてた?」

ハルは頷くと

「体だけは丈夫だから」

真由も惚れてしまいそうな柔らかい笑みを見せた。

「平野さんは?…あっ、名前、もう変わってるか」

ハルの繊細な心遣い。

素敵な女性になったなあ、なんて思う。

「うん、でも平野でいいよ」

真由はその辺、全く気にしないタイプだった。

そのままハルの隣に座る。

「今日も仕事で遅くなってしまって…」

ハルはふぅ、と息を吐いた。

「忙しいの?」

「うん、年中無休の会社で事務をしているから…。シフトで休みがバラバラなの」

「そっかあ…」

「平野さんは?専業主婦?兼業主婦?」

− あ、何か会話が続きそう! −

どうにかしてこのチャンスをモノにしなくては!

真由は妙なテンションで張り切り出した。
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