いつか孵る場所
「私は一応働いているよ。夫がバイク屋の店長だったの」

「…だった?」

「うん、去年病気で亡くして」

「あっ…ごめん、そうだったんだね」

申し訳なさそうにするハルに微笑んで

「気にしないで。仕方のない事だし」

真由は首を横に振った。

「まあ子供達がいてくれるから、何とかやってるし…」

「何人いるの?」

結構、ハルは聞いてくる。

「4人」

「わあ!子沢山ねえ」

ニコニコ微笑むハルに本当に惚れそうだった。

本当に嫌味がなくて、心の底から子沢山の真由を嬉しく思ってくれている。

透は高校の時にはすでにハルに癒されていたのか…。

そう思うと納得出来る。

− 透君、早くに出会って、別れてしまったんだね… −

真由は胸が苦しくなってきた。

「でも、4人といっても、3人は三つ子だから…」

「三つ子!大変だったでしょうね〜。あ、でも私は子供を育てた事がないから想像でしか大変だろうなっていう事も言えないけど」

− …ん? −

という事は…

「失礼な事を聞いたらごめんね。…結婚は?」

ハルはクスッと笑って

「残念ながら、まだ」

思わず心の中でガッツポーズをした真由だった。
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