いつか孵る場所
「…さて」

しばらくして透は手を離し、真由の肩をポン、と叩いて

「あまり遅くなると子供達が心配する。家に送るよ」

真由は黙って頷く。

そういう所作が堪らなかった。

胸が痛い。

男女の恋愛感情ではない、何かわからない気持ちだった。

「酷く泣いた跡があると子供達がビックリするし、僕が責められるじゃないか〜。そろそろ気持ち切り替えしようよ」

また泣きそうになっている真由に笑って透は言った。

真由も頑張って泣くのを止めて笑った。

− この人だけには、幸せになってもらいたい −

そう願ってやまない真由だった。
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