いつか孵る場所
「またか…」

この日は年度末の週末でアルコールを飲む機会が多いのか、急性アルコール中毒の患者が次々とやって来た。

付き添いもアルコール臭が酷い。

透は淡々と処置し、入院手続きの処理をする。

いつもは夜中までバタバタしているが珍しく夜10時を過ぎると少し余裕が出てきたので一瞬、目を閉じた。

これをするだけでも身体の疲れが全然違う。

高校の時くらいから妙な特技が出来て、例えば5分だけ寝よう、と目を閉じて寝ると見事に5分後、起きるというスゴ技を身に付けた。

大学の時も自分を追い込んで勉強する時は役に立ったし、医者になると尚更役に立った。

目を閉じて約2分後、電話が鳴ってすぐに目を開いた。

「はい…はい、ではこちらで受け入れます」

また新たに連絡が入る。

女性37歳。

職場で倒れたとの事。

意識レベル30。

同い年だなあ、なんてこの時はまだ悠長な事を考えていた。
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