いつか孵る場所
軽く目を閉じる。



ハル、どうしてあんな風になるまで放っておいたのかな、とか。

仕事中に倒れたっていうけど、何の仕事だろう?、とか。



くだらない考えが浮かんできて透は目を開けた。

両手で目を擦る。

全く眠気がない。

このまま、勤務に入っても全然問題ないくらい、興奮しているのがわかる。

自分の脈を取ると速い。

− 情けないなあ… −

ハルの存在がこれほど自分を不安定にさせるとは。

− 好き、なんだろうな… −

でも、今更。

それを出せる訳がない。

ハルはハルの人生がある。

自分がそこへ介入出来るなんて、思えない。

これが大学卒業してすぐなら、思いきって飛び込んだと思う。

あまりにも時間が経ちすぎた。



「透先生、お願いします」

また救急患者が来るようだ。

透は頭を左右に振って要らない妄想を押し退け、椅子から立ち上がった。
< 46 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop