いつか孵る場所
− 酷いイジメだ… −

夕方、透は医局でミネラルウォーターを口にしていた。
ようやく休憩が取れた。

皆が言うように結婚出来たらどれだけ自分の人生が幸せかと思う。
でも、そんな関係でもない。

先ほど、至とすれ違ったが
「ハルちゃんの所へ行ったか?」
と聞かれ、無視して休憩に入った。

まあ、確かに気になる、ハルの状態。
至は自分の目で直接確かめろ、と病状を教えない。
そう言うところを見るとそれほど深刻ではないというのがわかるのだが。

- 熱、少しは下がったかな -

透は立ち上がり、内科病棟に向かう。


ナースステーションの前を通るとまたクスクスと笑い声。

「お邪魔します」

そう言って前を通ってやった。
一瞬、笑い声は消える。

そのまま足早にハルの病室へ向かう。
部屋に入る前にすっと背筋を伸ばして咳払いをする。

ノックを3回

「失礼します」

そう言って入ると先客がいた。
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