いつか孵る場所
「さっきの、知り合い?」

ハルの病室ではピシッとスーツを着ている40歳前後の男性がハルに聞く。

「…高校の同級生です」

透の事はあまり話したくない。

「何か嫌なヤツだったよなあ」

この言葉にカチンとくる。

「人の会社の事情も知らないくせに」

− 当てつけにわざと言ってるのよ −

早く帰って欲しい、とハルは思った。

この上司、大竹が転勤してきた時はバリバリ仕事をこなし、部下への指示も完璧。

ハルは一緒に仕事が出来て幸せだった。

けれど、慣れてくると部下に仕事を押し付けたり、きちんとした判断を出せなかったり。

ハルがお気に入りのようで昼食には度々誘うし、勤務終了後はまた飲みに誘う。

最初は良かったけれど最近は特に他の女性社員との待遇が違うので陰口を叩かれたり、ハルの精神も参ってきていた。

以前、真由に言ったのはそういう事だったのだ。
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