いつか孵る場所
「退院おめでとう」

そう言って控えめに微笑む透。

「ありがとう」

ハルは頷いた。

- どうしよう -

ハルの胸が高鳴る。
あまりにも切なくて泣きそうだった。

「ハル」

声を出せば涙がこぼれそうだったからハルはただ透を見つめた。

「今週末は学会でいないけれど、来週食事にでも行かない?」

「えっ…」

「…ハルさえ良かったら」

「うん」

「じゃあ、また連絡するから」

透は嬉しそうに言うとハルの肩をポンと叩いて外来の方へ立ち去る。
ハルは慌てて振り返ると透の姿は行き交う人に紛れてよくわからなくなった。

ハルは思わずその場に座り込みそうになったけれどなんとか耐えて椅子に腰を掛ける。

「透…」

手のひらを膝の上で握った。
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