いつか孵る場所
「はい、そういう事で」

電話を切って、透はため息に近い呼吸をした。

周りを見ると、興味津々という様子の顔が並んでいる。

「じゃあ、帰ります」

透は椅子から立ち上がった。

「えっ、結局はどうなったの?」

真由の声が店内に響いた。

「…また今度、来た時にでも話するよ」

「ちょっと待てぇ!答えになってない!今日、会うの?会わないの?」

真由は怒りながら言うと

「それもまた今度」

透は微笑んだ。

「えー!先生、教えてよ!!」

真由の子供達が喚き倒す。

「じゃあまたね」

真由の次男、泰樹の頭を撫でて店を出た。



後ろから非難の声が聞こえたけれど、透はそのまま歩いた。
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