いつか孵る場所
透とハルはその後、しばらくして家を出て、デパ地下に行く。

適当に惣菜を買って、透の家に到着した。



「きちんとしてる」

部屋に入ってハルが発した言葉はこれだった。

「そりゃ一人だし、あまり家に帰ってこないから」

整理整頓が行き届いた部屋。
本棚にはズラリと小児科はもちろん関連する専門書が並び、柔らかい照明が何とも落ち着く感じで、透らしいなとハルは思った。

「1ヶ月分の家賃の元が取れてないと思うくらい、家にいないよ。だから綺麗かも」

透は惣菜に皿に見事なくらい盛り付け、テーブルに置く。

ワンルームと言ってもそこそこ広いのでダイニングテーブルは置いてある。

そこにまるで高級レストランのように並べた。

「透、何でも出来るのね」

「えっ、これって別に出来る、出来ないの問題じゃないと思うけど?」

ハルは頭を横に振って

「出来ない人、結構いるよ!私も上手じゃないし」

「別に下手でも良いと思うよ。気持ちが込もっていればね。これを食べてくれる人が嬉しそうにしてくれたらいいなあって気持ちかもしれない。多分、どこかで邪魔くさいとか思っていたら出ちゃうんだろうね」

そう言うとハルは楽しそうな声を上げて笑った。

「透、変わってないね!」

「ハルも変わってないよ」

二人は顔を見合わせて笑った。
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