いつか孵る場所
食事の間、今までのお互いの話を沢山した。
ハルは高校卒業後、小さな会社に就職したけれど不況で倒産。
その後、転々として今の会社にたどり着いた。
透に教えてもらった簿記に興味を持ち、何度か試験を受けて1級を取ることが出来たこと。
会社では色々と役に立っている。
透は大学を6年で卒業し、医師国家試験にも無事合格してからはそのまま大学病院に。
3年ほどしてその地域の公立病院へ行くことになり、小児科はもちろん、救急も掛け持ちしてスキルを上げていったこと。
もうこちらには帰らないつもりで仕事をしていたのに父が院長を務める総合病院で小児科医が次々と辞めて、至が透を呼び戻したこと。
「透は、もっと向こうにいたかったんじゃないの?」
ハルは痛いところを突いてくる。
「うん、まあね」
髪の毛をクシャっと掻き揚げた。
環境とか田舎だけれど住みやすくて良かった。
医師も少ないし、必要とされている期待は大きい。
「でも、兄さんが『このままじゃ小児科はなくなる』って言うから。ふとなっちゃんが高熱を出したあの時のことが頭に過ぎって…」
透はハルを見つめ、微笑む。
「その時いた病院にたまたま小児科の研修医と常勤医が入ってきたのも後押しになって帰ってきたよ」
「そうだったの…」
透は頷くと
「もし、僕の勤める病院の小児科が無くなったらあとこの辺りで大きいのは少し遠い市立病院になってしまう。そうしたらなっちゃんのような入院を要する患者が殺到して処置しきれなくなって最悪の事態になれば…考えただけでも嫌だよね」
本当に透らしい、と思う。
彼はずっと昔から見て見ぬふりは出来ない。
その辺りは全然変わっていない。
ハルは高校卒業後、小さな会社に就職したけれど不況で倒産。
その後、転々として今の会社にたどり着いた。
透に教えてもらった簿記に興味を持ち、何度か試験を受けて1級を取ることが出来たこと。
会社では色々と役に立っている。
透は大学を6年で卒業し、医師国家試験にも無事合格してからはそのまま大学病院に。
3年ほどしてその地域の公立病院へ行くことになり、小児科はもちろん、救急も掛け持ちしてスキルを上げていったこと。
もうこちらには帰らないつもりで仕事をしていたのに父が院長を務める総合病院で小児科医が次々と辞めて、至が透を呼び戻したこと。
「透は、もっと向こうにいたかったんじゃないの?」
ハルは痛いところを突いてくる。
「うん、まあね」
髪の毛をクシャっと掻き揚げた。
環境とか田舎だけれど住みやすくて良かった。
医師も少ないし、必要とされている期待は大きい。
「でも、兄さんが『このままじゃ小児科はなくなる』って言うから。ふとなっちゃんが高熱を出したあの時のことが頭に過ぎって…」
透はハルを見つめ、微笑む。
「その時いた病院にたまたま小児科の研修医と常勤医が入ってきたのも後押しになって帰ってきたよ」
「そうだったの…」
透は頷くと
「もし、僕の勤める病院の小児科が無くなったらあとこの辺りで大きいのは少し遠い市立病院になってしまう。そうしたらなっちゃんのような入院を要する患者が殺到して処置しきれなくなって最悪の事態になれば…考えただけでも嫌だよね」
本当に透らしい、と思う。
彼はずっと昔から見て見ぬふりは出来ない。
その辺りは全然変わっていない。