いつか孵る場所
- 呼び出しがあったので病院へ行きます
  送っていけなくてごめんなさい
  家の鍵は持っていてください -

ハルが起きるともう透の姿はなく、メモが一枚と鍵が残されていた。
そのメモを胸の前で握りしめる。
忙しいのはわかっている。
もし、結婚となるとそれに耐えられるのだろうか?
それに今までは空想の域で勝手に被害妄想に陥っていたのに現実味を帯びてきたもの。
透の母親。
あんなモンスターマザーに勝てるだろうか。
さすがに20年くらい経っているからあの勢いはないだろうけれど。
透を好きだという気持ちだけで自分のテンションを保てるのか。
これが20代ならまだまだいけたと思う。
37歳にもなると勢いだけではどうしようもないということが痛いくらいにわかる。

それと大竹。
とにかく遠ざけたい。



「どうしよう…」

思わず呟いて天を仰いだ。
透には返事をした以上、自分がやるべき事をしないといけない。
もう後戻りは出来ないのだから。



ハルは起き上がって透のマンションを出る準備をした。
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