いつか孵る場所
しばらく重い空気が二人の間に流れる。

透は大きく息を吐いた。

- まだ、時期尚早だったか -

『やっぱり、両親に会うのは止めよう』

そう言おうとした時

「うん、わかってる」

ハルが独り言のように呟いた。

「透とこの先、一緒に過ごしていくのなら、絶対に会わないといけないのはわかっている」

ハルの真剣な眼差しが透を捉える。

「わかってる…けど」

ハルの目から涙かこぼれる。
あの時の、息が詰まるような透の母とのやり取りがハルの頭の中でグルグル回る。

「ごめん、ハル」

透はハルを抱き寄せた。
自分の胸に顔をうずめて泣くハル。

- 作戦変更だな -

至に言われてから少し焦り過ぎていたようだ。
両親に直球を投げたかったが、止める。


- さて、どう出ようか -

泣きじゃくるハルを抱きしめながら透は考える。
ハルのトラウマをどう取り除けばよいのか。
今の段階ではまだ透にも具体的な案が出なかった。
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