いつか孵る場所
7.戦略と戦術と
その週の土曜日。
至の提案で透とハルは食事に誘われた。
午後7時に待ち合わせ。



透は当直から通常勤務を終えて、何とか病院を17時半に出た。
そのままハルを車で迎えに行き、至が予約しているフレンチレストランへ。



「うわぉ…」

ハルは思わず変な声を上げた。
外装からしてお洒落な店。
ハルは自分の服装が違和感ないか何度も確認してしまった。
無難なワンピースを選んできたが、微妙な感じがする。

「そんなに気にしなくても大丈夫!」

透はハルの手を優しく握った。

ちょうど5分前に着き、時間的にはいい感じ。
お店に入ろうとした時、バイクの停まる音が聞こえた。

「あ。」

透が振り返って立ち止まる。
スポーツバイクから降りたのは小柄な女性。

- 知り合い? -

ハルがそう聞こうとしたら、その女性がこちらに向かって手を振っている。
透はハルの手を繋いでいる逆の右手を軽く上げた。

ヘルメットを脱ぐと人形のような可愛らしい顔をした女性が

「透さ~ん!!」

と叫んで手を振った。

透はニコニコと微笑んだままその女性を見ている。

「…誰?」

ハルは少し警戒しながら聞くと

「誰だと思う?」

クスクス笑っている。

その間にその女性はグローブも外し、ヘルメットを持ってこちらに走ってくる。

「透さん、お久しぶりです!」

透もにこやかに返す。

「お元気そうで何よりです」

その女性は頷くとハルを見るなり

「会いたかった~!!」

と言って初対面にも関わらず、抱きついた。
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