さくらの花が舞う頃に
水川先生は少しためらっていたけど、やがて人目をはばかりながら小さな声で言った。
「だれにも言わないでね。実は私、吉澤先生の元カノなの」
………え?
「だから、裕翔の普段の様子が気になっちゃって……
こんなこと聞いちゃってごめんね」
元カノ?
裕翔?
私は、水川先生の言葉に呆然と立ち尽くした。
あれ、私なんでこんなにショック受けてるんだろ。
吉澤先生が昔だれと付き合ってたって、私には関係ないのに。
「さくらー!」
私が混乱していると、後ろからだれかに呼ばれた。
振り向くと、手招きして私を呼んでいるメグと佳奈が向こうの方に見えた。
「もうすぐお昼休み終わっちゃうよ~?
早く戻ってきなよ~!」
「あ、うん!」
メグにそう言われ、私は会釈してその場から立ち去った。
「………わかりやすい子」
水川先生が後ろでそうつぶやいたけど、周りの喧騒にかき消されて、私の耳には入らなかった。