さくらの花が舞う頃に
すれ違いざまにそう声をかける。
「別にいいよ。裕翔がぼーっとしてるなんて珍しいね」
お前のせいなんだけど。
そう言いたくても言えない俺の顔を見て、結衣がくすっと笑った。
「ひょっとして、昨日私が言ったこと引きずってるの?」
いきなり言い当てられ、思わず返答につまる。
それを見て、結衣はさらに面白そうに笑った。
「なんか嬉しいな。
裕翔がそんなに私のことを考えてくれてたなんて」