さくらの花が舞う頃に




そう思っていたのに。
 


現れてくれた。



目の前で頬杖をつきながら景色を見ている戸山くんが。



必死になって私を探してくれた戸山くんが。



「戸山くん」



小さくそう呼びかけると、戸山くんが目だけをこっちに向けた。
 


「ありがとう」と言う代わりに、



「…………教室に戻らなくていいの?私なら、もう大丈夫だよ」



そう言ってみる。




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