さくらの花が舞う頃に
それを見て、戸山くんがちょっと落ち込む。
「でも」
「え?」
「ありがとう」
私がそう言うと、戸山くんの目が驚いたように見開かれた。
「私があまりにも元気がなかったから、戸山くんなりに励ましてくれたんでしょ。
でも、もう大丈夫。休みの間にいろいろ考えたの。
吉澤先生のことはもう引きずらない。メグと佳奈にもちゃんと謝る。
だから、もう気を遣ってくれなくても大丈夫だよ。ありがとう」
「観たい映画がある」なんて口実。
ほんとは、私を元気づけるために戸山くんはここまで私を連れてきたということに、
私は気づいたんだ。
戸山くんは、しばらくの間、固まっていたけどやがてほっとしたような表情になった。