さくらの花が舞う頃に
「ちょっとちょっと〜。みんな聞いて〜!」
パンパンと手を叩きながら戸山くんがみんなに声をかける。
「なんだよ〜。
リア充のラブラブエピソードなんかは聞きたくないぜ」
男子がそう言って戸山くんを冷やかす。
だけど、戸山くんは顔色ひとつ変えずにその男子を見て言った。
「なんかみんな勘違いしてね?
たしかに大橋さんと映画は観たけど、たまたまショッピングモールで会ったから、
一緒に観よって俺が強引に誘っただけ。
デートとかそんなんじゃないって」
「え?でも………」
納得がいかないらしいみんなが何かを言おうと口を開く。
だけど、戸山くんはそれを遮って続けた。
「それに、俺みたいなやつが大橋さんと付き合えるわけないじゃん」
そう言って戸山くんが人懐っこい笑顔を見せた。