さくらの花が舞う頃に




「裕翔。

あの………… もういいの?大橋さんのこと」



結衣が聞きづらそうにしながら、痛いところをついてきた。



「え……それは」



一瞬、返答に窮する。



だけど、答えることはひとつしかない。



「もともと、そんな本気で好きだったわけじゃないし。

つーか、このままさくらのこと好きでいても実るわけねーじゃん。

そんな恋してても時間の無駄なだけ」



言いながら胸の奥が苦しくなる。



さくらのこと忘れるとか偉そうに思ってたけど、そんなの簡単にできるわけがない。



一回好きになった人を都合よく忘れることができるほど俺は器用じゃないってこと、

そんなの俺が一番よく知ってる。



だけど。




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