さくらの花が舞う頃に
「最初は大嫌いだった。顔も見たくなかった。
強引で、偉そうで、自信満々で。私の一番嫌いなタイプ。
なのに、話しかけられるたびに嬉しいって、冷たくされるたびに悲しいって、思ってる自分がいた。
恋なんてしたことなかったから、これが好きっていう気持ちかどうかもわからない。
だけど、確実に先生に対しての感情が最初と変わっていたの。 それなのに………」
言いかけて、声がつまった。目からこぼれ落ちる何かで視界が歪む。
「先生の、私への態度がどんどん変わっていった。
先生は、私のことを好きって言ってくれてた。 だから自惚れてたの。
先生は私のこと好きなんだから、私がちょっとくらい冷たくしたって大丈夫だって。
でも、違った。人の気持ちは永遠じゃないってこと、変わりやすいものだってこと、
中学のときの経験でわかってたはずなのに………。
私が悪いんだってわかってるよ。自分の気持ちを大切にしなかった、私のせい。
それなのに、想いは消えるどころかどんどん募っていくし、
都合よく戸山くんの気持ちまで利用して。 ほんとに私って最低…………」
話し終わったあとも、二人はじっと私を見つめていた。
こんな私に幻滅したかな。 見損なったかな。
やっぱり、二人にこんなこと話さない方がよかったのかも。