さくらの花が舞う頃に




制服を見て、俺がこれから勤める高校の生徒だということはわかったけど。



俺が思っていた「女子高生」というイメージからはあまりにもかけ離れていたから、

すごく驚いたのを覚えている。



そのとき。



突然強い風が吹いて、駅前にある大きなさくらの木からたくさんの花びらが散った。



ほとんどの女子生徒は自分のスカートを押さえるのに必死で、そんなこと気にも留めていなかった。



いや、普通はさくらの花びらが散ったなんてどうでもいい出来事だろう。



ところが、さくらは違った。



その中の一枚の花びらが、さくらの前にふわりと落ちた。



その花びらを見つめるさくらの顔に、少しずつ笑顔が広がったのだ。



さっきのつまらなさそうな顔からは想像もつかないような、本当に優しい笑顔だった。



その笑顔に、少しドキッとしたことには気づかないフリをしたけど。




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